【人】 赤い靴 キファ>>90 ルヘナ ぽつぽつとしたあなたの語り口は、 正しく、自らの在り方を探しているように見えた。 自らの中を彷徨う僅かな『意義』を、 必死に手繰り寄せている。 少女はそう解釈すると、あなたが口を閉じるまで。 瞑目し、真摯に聞いていた。 ……同意も否定も。憐れみだって、しない。 それから、言い放つ。 「阿呆。吾はサダルを悪く言ったのではない。 おまえを性悪だと、言ってやったのだ」 一拍。紅茶を含み、舌を濡らす。 言葉を弄ぶような問答。心地好い。 「……──好かろう。」 少女は実に愉快そうな声色で、そう答える。 この会合に、斯様に己が興味を擽る人間が居るとは。 サダルの言い間違いにも、感謝をしてやろう。 → (124) 2021/04/21(Wed) 14:03:17 |