【人】 第11皇子 ハールーン[その声の方に、視線など向けられない。 一日だって忘れたことはなかった──なんて、そんな事実を思い起こすのも口に出すのも嫌だ。 油断していた。来ないと言われていたし、実際居なかったから。 衝動的にダレンに縋りたくなるのを拳を握って堪える。] 「水臭いね、アンタル。教えてくれたのなら 予定は開けたのに。愛しい弟に会うための時間 ひとつ作れないなんて、王たる者失格だろう? イスマーイールが教えてくれなかったら 危うく機会を逃すところだったよ」 [無表情のままカップに口をつけるその弟と、薄く笑うイスハーク。 当然のように自分の隣へ座る彼の、二人の従者はソファ近くへ。連れ歩く兵団の一部は広間の外で待たせているのが見える。 一脚余ったティーカップは"そういうこと"だったのかと、今気づいた。乳母達が足早に、空いたカップへいつの間にか用意されていた淹れたての紅茶を注ぐ。] . (126) 2021/04/22(Thu) 23:15:22 |