【人】 橘 幸也―到着まで>>122>>123― はぁ、はぁ、……ごめんなさいっ! うん……前ね。 夏、出かけた時のことを思い出してたら。 [ ぺこりと頭を下げて乗車待ちの列に加わろうとする、前に。 缶コーヒーを華さんから受け取ってはにかみ笑った。 前というのは、夏休みのこと。海で泳ぎませんかって言い出して、電車で半時間ほどの距離にある海水浴場へ彼女と一緒に行ったんだ。もちろん夕方には互いの家につくような、健全なお出かけだったけど、デートだったのには間違いない。 くすりと笑う彼女の表情に、その時の様子を重ねてしまって目線をそらした。] ……あ、アナウンス。ほんとギリギリでしたね。 間に合って良かったあ……。 [ すこしごまかし気味にそう言って、新幹線の車内へと。 考えてたことを聡く気づかれてしまったかどうかは、今は、まあ、秘密にしておきたい。] (131) 2020/12/27(Sun) 0:59:17 |