【人】 巫凪 桜花[まだしなやかに細く、脆い枝を見定め、足を止めた。 天窓に切り取られた陽光が降り注ぎ、その下に立つ白衣が、 淡く白光を滲ませる。 つと地に膝折れ、頭を垂れる仕草は、 旧人類が祈りを捧げる姿にも、 或いは、不朽の愛を乞う姿にも似る。 触れる仕草は、慰撫するよう] [静寂を破るざわめき。 葉擦れが、空気を震わせる。 天窓越しの空へと、一途に腕を伸ばす枝、枝。枝。 黒茶の幹肌が、絡む緑にみるみる覆われる。 膝下より低かった若木は、首を反らしてなお見上げる巨木へと育ち、果実をその腕一杯に実らせる。 がっしりとした幹には、ともに成長を遂げた蔦が巻きつき、 蛇のように搦む。 一つ捥いでみれば、赤く艶々と、掌におさまる丸い果実。 顔を寄せれば、甘くも爽やかな匂いが胸を満たす。 齧ればきっと、瑞々しいのだろう。 ―――恍惚の、息を溢した] (131) 2023/11/21(Tue) 10:57:41 |