【人】 Conqueror リヴァイ[祖国が学生を出迎えるために寄越した馬車は、どこまでも不気味だった。 そこに繋げられた、ドラゴンじみた羽根の生えた骨と皮ばかりの馬は、「死」を見た者だけがその姿を目視できるようになるらしい。 幼馴染をその手に掛けた少女はその哀れな姿が嫌と言う程見えていた。] ────お別れだ! Wilhelm Herrman Joshias Leopold von Arenbergくん! 精々のたれ死なんように学業に励むといいさ! [黒い馬車に花束を預けてしまえば、自由になった腕を上にあげ、渡された刃を天へと掲げる。 決して振り向かず、背を向けた儘、初めて彼のフルネームを言いきって ──過去に名前が長くて覚える気が起きんと言ったくせに── ひらりと中に飛び乗った。惜しむ時間も与えないまま、馬車は天へと飛び上がり、迷いなく乗客を目的地へと送り届ける事だろう。] [懐かしい祖国へ───血濡れた反逆の狼煙をあげる運命へ。 陽だまりを捨て去り、過酷な死しか存在しない寒さの中へと身を投じる少女の表情はまた、氷の様に無に返っていた。]* (132) 2020/11/27(Fri) 16:46:48 |