【人】 新人看守 ダビー>>131 ナフ 腹部の痛みに耐えかねて折れた体に降り注ぐ貴方の声。 無表情を貫いていた男が、痛み以外の理由で顔をしかめた。或いは、ただ目を細めたようにも見えるかもしれない。 理解に苦しむ。 理解してはいけない。覗き込んではいけない。 どれだけ体が叫んでいても、悦びと共に踊り続けられる貴方であれば。前傾姿勢を取らざるを得なくなった男の肩を掴むのは容易いだろう。 「ーーーッッッ!!!」 ──しまった、思う頃にはもう遅い。 柘榴色に飲み込まれる。 衝撃と共に初めに感じたのは視界の暗さだ。一瞬でぐにゃりと歪んで明滅する。続いて鋭い痛みを追いかけてくるように燃えるような鈍い痛みが頭を覆う。同じようなタイミングで血が額を伝い落ちているのも感じた。 初めからずっと握っていた拳銃さえもからんと手から滑り落ち、二人の男の血で汚れ切った草原に音もなく落ちていく。 もう体がどうなっているのか把握するにも一苦労だ。 それでも男は倒れてはならないと精神力だけで体を支えて行動に移す。 真似をするように胸ぐらを掴もうと手を伸ばし、その上逃げられないようにブーツで相手の素足を踏もうと足を振り下ろした。 そのまま、もう暫く呻き声しか出ていない唇は、久しぶりに言葉を紡いだ。 「……ッ、は、ぁ……《雨よ》……!」 力の行使。前の戦いでアマノの体を貫いた血の針の生成。 けれど能力操作の補助を担う拳銃を取り落とした今、額を濡らす血だけで生成できる数などきっと片手で足りる程度だ。 それでもいい。相手を倒せる手段があるのならなんだって使ってやる。 体の血が燃えるように沸騰する錯覚に襲われながら、生命を削って生み出した針を貴方に向けるだろう。 (133) もちぱい 2021/10/03(Sun) 7:02:53 |