【人】 逃亡者 ポルクス>>132 ゾズマ 「……。同じ魂を分けた双子はね、どちらかが強い力を持って生まれることが多いんだ。 俺の場合は、兄のほうがそうだった。 それなのに、兄の力を忌み嫌った両親は兄を認めず、俺を嫡男とした。 兄は塔に閉じ込められて……称賛も、親の愛も、教養も、全部俺が独り占め。 本当は全て兄の物であったのにね」 その後はあなたも軽く知ってる通りだ。 深い愛憎の末、追い追われる者となった兄弟の末路は、他人が聞くにはあまりにも滑稽だ。 兄は本当にほしかった愛を手に入れ、俺は必要がなくなった。 身体に空いた大きな心の穴は、きっと生涯癒えることはないだろう。 「今はもう求めないことにした。 でも……多分そういう事になったら、拗れきった俺は酷く喜ぶと思うよ。 そう簡単に人間は変われるような生き物でもないでしょ」 「だから俺には近寄らないで」 もう交わるべきではないと思うから。 (133) 2021/10/28(Thu) 18:23:58 |