【人】 不覊奔放 ナフ >>133 ダビー 細めたあなたの翠に映るのは、きっと、眉を寄せ額に脂汗を掻きながらも、なんとも生き生きと楽しげに笑う男だっただろう。 頭突き、というものは。こちらだって無傷とはいかないもので。 ぐわん、と頭が揺れて、一瞬視界が明滅した。 いつもならそんなことはないのにな、と頭の片隅が告げ、血が足りないのだとどこかで自分の声が答える。 そんな、一瞬の夢のようなものを見るくらい。 血の匂いが増した。それがどっちのものかももう分からない。 素足を踏まれる鋭く質の違う痛みに咄嗟に身を引きかけ、更にすり潰されるような痛みを感じた。 左足は踏まれ、右足は砕けている。両腕はまだ数回くらいは使い物になりそうだが、それを使うには胸ぐらのこの手を離させなければ。 ーーー嗚呼。 何が来ても避けられないな。 「……あッは、」 それでも出たのは笑い声。それも、何処か満足げな、穏やかで小さな。 直後、血の針で穿たれることになるだろう。 もはや防ぐことも逃げることも出来ず、あなたの思いのまま。片手で足りる数のそれを、一つも残さずその身で受けるはずだ。 (134) 2021/10/03(Sun) 7:22:24 |