【人】 “小雪” 篠花[親族では直系長子である私が小雪であるべき、という声の方が大きかった。らしい。 あくまで“らしい”だ。 その頃の私は兄から押し付けられた仕事を片付けるので手一杯で、あまり実家に帰ることはなかった。 あったとしても新年の挨拶とか、そういう行事ごと。 そばには必ず兄がいたから、二人揃っているときにそういう話をする愚か者もいなかった。 実際のところどうだったのか、私の耳には入らなかった。 けれど、私はそんなの関係なかった。 仕事はしないが、兄の方が優秀なのだ。 優秀な方が統治すれば、統治域は豊かになるのだから。 兄が小雪を続けていけばいい。 私はそばで補佐として。蛍としていられればいいと思っていた。 私はそれで幸せだったの。] (134) 2022/01/20(Thu) 1:01:29 |