【人】 涼風 梨花─ 2日目 ─ [あれから、女はマイペースに 普段と変わらぬ船旅を楽しんでいた。 空腹を感じればレストランで食事して、酒を飲み 広々としたスイートルームで読書に耽る。 御子柴からの"言いつけ"を律儀に守っているわけではない。 何度か声を掛けられたが、そのどれもが 女の求める基準を満たさなかったのだ。 セックスできれば何処の誰でもいいなら、わざわざ大枚叩いて 船旅になどでない。 いっそ、このまま何事もなく終わるのもありだろうか。 それはそれで勿体ない気もした。] こんばんは、……来てくれたのね。 それとも別の誰かを待ってた? [軽い口約束を交わした時間と場所。>>124 佇む背中はやはり夫とよく似ている上に、どことなく 哀愁や疲弊が見れるそれに自然と胸がきゅ、と詰まる。 昨日とは違うワンピースの裾を潮風に揺らし、 柔らかな調子で声をかけて。] (136) 2020/07/17(Fri) 9:37:43 |