【人】 “小雪” 篠花[しかし、一度誰かの前に立てば 隠し切れているかどうかは兎も角として 、何事も無かったかのように。「非常に困った兄です」と、困ったり怒ったりした素振りは見せても、叫ぶことはしなかった。 職務を全うする、統治者であろうとした。きっちりと公私を分けたのだ。 もしかしたら、気遣う声をかけられたかもしれないが、それにも大丈夫と答えるだけだった。 兄に甘えることより、兄のストッパーでいる方が多かった。 怒る回数は兄ではなく、私の方が多かった。 いなくなってから初めて甘えていたことに気付いた。 他人への甘え方がわからない。 篠花家からも風見家からも、蛍を迎えるように言われたが、仕事を教える暇がないからと断った。 今、蛍を迎えたら。その人に酷い八つ当たりをしそうで怖かった。 幸い、一人で回せられたから。回せてしまったから。 止むに止まれず迎えよう、という考えにもならなかった。 そうして短くない年月が流れた。] (136) 2022/01/20(Thu) 1:02:20 |