【人】 天野 時雨[ 寒い日だったと思う。 霙まじりの何かが空からはちらちらと舞って、 お客さんもほとんど居なくて。 俺は俺で、ぼんやりとグラスを磨いていた。 手を動かしていれば、嫌な事を思い出すことも ないだろうと思ったのに、静か過ぎる店内に流れる ジャズの音にさえ、思い出を揺り起こされて、唸る。 隣で煙草を燻らせるオーナーに言葉をかけようと 手を止めた時、木製のドアがギィ、と音を立てて 開いた。>>127 ] いらっしゃいまっ…せっ…!? [ もはや条件反射のように口から出るいつもの挨拶は スムーズには流れず、失礼極まりないことに その人を思わず凝視してしまう。] (でっか…) (138) 2020/07/14(Tue) 11:36:54 |