【人】 軍医 ルーク ……、 約束した、そのときは、手を握ってるって。 起きて。 [ 震える手を励まして、動かない左手を取る。 この両手で、包むように。 ――… どうしようもない恐怖に、飲み込まれそうで。 出来るなら、自分のすべてで、 繋ぎ止めることが出来たならと、そう思うほどだ。 ごめん、と、悲しそうに笑った笑顔が瞼に蘇る。 これまでにくれた、幾つもの笑顔だとか、 医務室で過去を告げてくれた日の泣き顔、 手を握ってくれた、穏やかな笑顔、 いつもの医務室で自分が脅かしたときの、 何をされるのかと震える耳だとか――… 通信機を探しに行ったあのとき、 飴をくれたときのこと。 そのような、ひとつひとつの瞬間まで。 この身体を、伽藍洞だった心の中を、 いつの間にかこんなにも、君が満たしていた。] (140) zelkova 2020/05/28(Thu) 23:21:08 |