【人】 新人看守 ダビー>>140 トラヴィス 肩を叩かれたその瞬間。 「──ッ!」 ぶわりと殺気が迸る。 ホルスターに納めたばかりの拳銃をすかさず抜いて構えた。脳が指示を出したわけではない。肉体に染み付いた反射にも等しいものだった。 「……ぁ、あ。 …………とんだ無礼を。申し訳ございません、トラヴィス様」 自身に触れるのが己の先輩であると理解した瞬間、目を僅かに見開いて速やかに得物を下ろし、深く頭を下げた。 戦闘を終えた自分の骨は何本も折れているし、きっと幾つかはその奥に刺さり今もなお痛みを生み続けている。それでも、先輩に銃口を向けた事実のほうがより新人看守の心を苛んだ。 「実戦は……そうですね。久方ぶりです。鈍らぬようにと看守になってからもトレーニングは重ねてきましたが、こうして他者と実際に戦うのは……本当に……」 (141) 2021/10/03(Sun) 8:56:43 |