【人】 和宮 玲──美鶴荘の噂── [10回も参加していると不思議な体験もすることがある。 あまり知られては居ないけれどこの宿屋には ……出る、のだ。 それは丑三時の話。 参加したのが、5か、6か。 情事の汗を湯で流し身を清めてから 薄明かりの下、廊下を歩いていた。 照明は敢えて暗くしているところもあるのだとか。 段差など危険なものは無いとのことだが一応注意して歩く。 その廊下は右手側の壁が大きな窓となっており そこからは外がよく見えるようになっている。 山の斜面が切り立って、逞しい木々が何本も生えている。 それは秋頃だったからか、紅葉が綺麗だったのだが 夜とも慣ればややその色彩も色褪せる。 歩きながらでは危ないと足を止めてそちらを見やる。 すると、ひゅぅ、と風が足下を撫でたのだ。 窓も開いていないのに、風? 私がそちらを見た時に、男の姿が見えた気がしたのだ。] (142) 2020/08/09(Sun) 18:51:47 |