【人】 音楽家 宵闇>>116 清和 「──どうも。ぎゃふんの"ぎ"くらいは出たかな」 短く礼を言って、薄く笑う。 がむしゃらだった少年時代よりは落ち着き払った笑み。 生ぬるい夏風が頬を撫でた。 「祝賀会。売れないシンガーソングライターなんて もう言えなくなっちゃうねえ、嫌味になる」 盛大に祝われるのは柄じゃないが、と零しながらも 悪い気はしないようだった。酒は好きだ。 「うん、やっぱ全然変わらない。 俺が困った時は助けてくれんのかい、正義の味方さん」 その、誰にも掴ませないところはやっぱり変わらない。 昔なら「生意気だ」なんて、つっかかっていたところだ。 (144) 2021/08/10(Tue) 16:13:36 |