【人】 おかえり 御山洗>>1:143 宵闇 「あはは、セミ捕まえるのもカブトムシ捕まえるのも、もう交代だな。 山遊びなれてない子どもたちに教えるとか、さ。再来年にはもう三十なんだから」 懐かしい顔に十年前を思うように、スイカを食べる様子を見て自分も同じようにする。 種を飛ばした距離で負けたり、食べるのがヘタで手を汚したのも今は昔だ。 いつしか子供らしい仕草というのは都会にいる内に消えてしまった。 「……やっぱり翔だったんだな、あの音。 そりゃ作譜っぽいことしてたときとは全然違うけど、聞いた時もしかして、と思って。 おめでとう、翔」 実のところはっきりとした確証は無かった。そうだったらいいなという願望だったかもしれない。 けれどもふと流れてきた音を聞いた時に頭に浮かんだのは、宵闇のことだった。 (145) 2021/08/10(Tue) 16:19:22 |