【人】 特殊NPC シトゥラ>>144 その、瞳の煌めきを思い出す。 少女の爪が、肌を裂く感覚を思い出す。 その、熱は、衝動は、渇望はもうここには無い。 それはきっと、ロールの放棄によって失われる。 「死に損なって、苦しい思いをするのなんてご免だわ。 ねえ、シトゥラ。あんたはわたしを上手に殺せるのかしら」 青年は、手を離した。 「――そうしたいと言ったら、連れていってくれるの」 繋いだ手が、解ける。 ここに残るのは、あの時の少女ではなく。 赤い目の狼なんかじゃなくて、きっと。 そうなった少女の中に、残った感情を。 残るだろう感情を、青年は推測できない。 どこまでが“餓狼”のバグなのか。 彼女が青年に、手を伸ばした理由もそこにあるのなら。 それがこの修正によって、失われても。 しかたないと、諦めることは、きっと。 (147) chige_00 2021/05/01(Sat) 1:33:40 |