【人】 XIV『節制』 シトラ[ 初めましてのご挨拶を交わした際 人見知りな上に滑舌の悪いわたしは 初めて彼の名前を呼ぼうとして、 『かるるどらさ……っ ちが、ちがう そうじゃない…… かうくろ………… っじゃ、なくて かるくろらさ………… ご、ごめんなさいぃ…………!!』 ……と、どうしても正しい発音ができなくて カルクさんとお呼びさせていただくに至ったという 今思い出しても泣き出したくなるような過日がある。 そんな失礼を最初に働いておきながらも、 アリアちゃんが調合や他の用事で忙しい時や 悪夢に魘されて眠れないまま夜を明かした早朝、 祈祷室の末席に膝を抱えて座らせてもらう頻度は みんなの中でも割合高い方だったと思う。 どれほど懺悔を重ねても 罪悪感がなくなるわけではなかったけれど、 それでもお祈りを捧げている間は 少し呼吸が楽になるような気がした。 ] (149) 2022/12/14(Wed) 18:25:13 |