【人】 おかえり 御山洗>>1:148 宵闇 「なら、混ざっておいでよ。髪置とかに。一日山中駆け回ってるんだから……それもそれで心配だな。 もうとっくにアラサーで、無理して飲み明かしたりなんてのは出来ないんだから、さ」 不格好な物言いや仕草もなんだか微笑ましいものだ。言葉ほど老け込んだとも思っていない。 けれど、昔ならもっと気遣わしげに、そんなことないよ、なんて言っていたかもしれない。 分厚くなった体や知らない土地での十年は、無意識の内に青年を大人に変えていた。 「バカ。冗談言うなって。 でも造詣の無い俺がわかるっていうのも、確かに不思議な話だね。 ともかく気を抜かずに頑張ってな。……みんな、応援してくれるよ」 冗談めいた言葉には、ため息混じりに笑い飛ばした。 内緒にしていたと言うのならまだ村中には伝わってなくても、一昼夜の内に広まるのだろう。 それでも、きっと誰もが彼を応援してくれるだろうということは確信していた。 (153) 2021/08/10(Tue) 17:40:17 |