【人】 クラヴィーア ― 閑話:願い ― [ 紅 い月への願いは 必ず 叶う記憶 を対価に 私は当時願いの対価を知らなかった。>>20 気づいたのは、島から帰った後だった。 親戚が昔よく母とピアノを弾いていたのを覚えてない? と聞いてくれた。その記憶が全くなかった。 それだけじゃない。まだ幸せだった頃の父の記憶も不自然な位思い出せなかった。 自分の力では気づくことも出来なかった。 失うというのはそういう事だ。何もかもを、手放すという事。 私が願ったのは二つ。 怪我を治す事。 もう一度、アマミさんに会いたい。 そのどちらも願った事を後悔してない。 ただで叶う願いなんて怖いだけだ。対価として納得している。 自分で選んだ自分の為の願いだから。 そう思えれる────── ] (161) 2021/04/02(Fri) 19:53:17 |