【人】 おかえり 御山洗>>1:156 鬼走 「俺はその、ここを起った理由が……ですから。 いつまでも周りに支えられてないで俺がしっかりしないと、ってのはあったかな……」 子供らはその意味が分からずとも、当時既に大人であった鬼走にはわかるだろう。 御山洗の母親は村に嫁いできて、御山洗の卒業を待って離縁し村を出ていった。 どちらにつくかを迫られたとき、御山洗は母親の方についていったのだ。 古巣の人々への挨拶は一部に対してのみの密やかなものだった。 「なんだろう、急に……随分ちっちゃい子達も、ここを離れてたんだなって。 話の腰を折っちゃってすみません。何もおかしいことなんてないですよね」 そうだ。皆と会っていなかったから、顔を見るのが久しぶりだから。 それが理由で子どもたちの成長に驚かされているだけ――の――はずで――。 どこかに引っかかった針は、けれども鬼走が当たり前のようにしているから、ほろりと落ちた。 (162) 2021/08/10(Tue) 18:26:59 |