【人】 門を潜り ダヴィード>>183 イレネオ 穏当に、真っ当に、日の当たる道を歩むこともできたのだろう。 少なくともあなたの目の前で笑っている間は、今この瞬間は、何も知らないおねだりが少し上手いだけの子どもだった。 年相応に世界が自分の思うがままに回っていると勘違いしできる愚かさも持っていた。 浮かれるままに貴方を先導していく。 ベンチに座り紙袋を開ければ、蒸気に蒸された紙袋特有の匂いと、まだあたたかいパンとチーズの匂いがふわりと辺りに広がったことだろう。 「ありがとうございます。イレネオさんも冷めないうちに。 Buon appetito。」 食前の挨拶を済ませれば、朝食を抜いた男の食欲……と食べ進める速度は相応のものだった。 ピッツァの具材はサラミに生ハム、それにベーコンという暴力のような構成だ。しょっぱさと肉の脂がとろとろのチーズと溶け合って若さの特権として胃にするすると収まっていく。 パニーニはシンプルな構成で、焼き目の付いたパンと生ハムにモッツァレラ、それに挟み込まれた野菜が層となって、ざっくりと齧ると触感の違いが楽しい。 ひと心地ついてからはたと我に返る。おすすめに対する貴方の反応は如何だろうか? フレーバーウォーターを時折挟みつつ、ちらちらと様子を窺った。 #商店街 (186) 2023/09/11(Mon) 20:17:41 |