【人】 1年生 工藤美郷そうですね。例えば…… [と、工藤の面倒な魔法のことを話しただろう。>>3:127 肌に当たる服の感触が気になって、同じ素材しか着れないこと。 天井の低い場所では、音が逃げなくて耳が痛くなること。だからよくイヤフォンをつけていること。 同じ食材を食べても毎回違う味に感じてしまうこと。 林檎一つ食べるにしても。品種が違えば果肉の歯触りが変わる。 口に入れて、咀嚼するうちに温度が上がれば、酸とえぐみの香りが解けて、舌がひきつれる感覚が起こる。 皮にわずかに残る農薬の香り。洗った水道水の塩素の匂い。そういったものにえずいてしまう。 切れにくい包丁で切れば、繊維のもつれが気になる。かといって、ステンレスより鋭い切れ味の鉄包丁を使えば、今度は鉄の味がする。 鋭すぎる五感の上、多くの人が当たり前に行っている、不要な情報を捨てる能力が低い。 そういった特性を持つ工藤にとって、世の中はうるさかった。 だから工藤は同じ事ばかりを繰り返す。同じ音楽を聴き、同じ時間に動き、同じ食べ物を選ぶ。情報が多くて混乱しても、同じ事を繰り返していけば秩序が生まれるから。] (192) 2022/09/09(Fri) 7:08:28 |