![]() | 【人】 日本舞踏家 月嶺 澄翔― 撮影開始 ― [ヘアメイクに照明に小道具にと、一斉に撮影準備が始まったものの、残念ながら、夜明け前の撮影には間に合わなくて。けれどその後の"朝拝"のシーンからは、予定通りの撮影が叶うことになった。 祝詞の準備をする貞親、鈴を手にする篝。 厳かな祝詞奏上の後、鈴の舞奉納がある。神前には、その前の段、2人で支度した神饌が備えられ。 遥か昔の情景を切り取ったような一幕。 前段となる神饌準備のシーンでも、井戸の水を汲み、古風な窯で米を炊くといった情景が描写されているから、ますます現代の話とは判じがたい風な演出が、ミスリードのように加えられていた。] 貞親様。 名を、……呼んで、いただけますか。 [劇中に呼ばれるのはたったの一度。一度きり、だけれど。 撮影直前、圭吾さんにそう乞うて、"篝"と呼びかけられたら、すう、と"澄夜"が遠ざかっていく心持ちがする。 ────私は、篝。 ────貞親様に仕える、一人残った、最後の巫女。] (195) Valkyrie 2025/08/13(Wed) 21:00:03 |