【人】 “観測者” 処暑[ さて……そんな会場内に、大寒の彼女の姿はあっただろうか。 大寒の彼女を実際に見掛けるのは何時ぶりのことであったか……見たことがない、ということは無かったと思うが、曖昧になる程以前なのだと思う。 私も彼女も、大雑把に数十歳、と言える歳であるし、付き合いはそれなりだった筈。 まだ靴を履いていないようならば、先程中央の人間と話していたことを思い出しつつ、まだ解決していないのだな、と思うだろう。 彼女が今日、此処に姿を見せた理由は分からないが。 興味がないとは言わないが、私から聞くこともないだろう。 ところで、大寒の彼女は戯れに他の領域へと手紙を送る事があるらしい。>>0:372 ……何故知っているかというと、それが私の元へも届いたことがあるからだ。 最初は宛先のない手紙に対し、どうしたら良いか分からず放っておくだけだったが、 領域に届いているのだから、怪しいもの、という訳でもないと気付き、 差出人を“風”で探したら、それが彼女だったという話。 一度、私は気紛れで返事をしたことがある。 “観察日記”の延長線上、その時期の処暑域の田畑と海の様子を描写したものだ。 それに返事は来たのだったか、そして、気紛れに文通は続いているのだったか。 “雪の雫”のマークを入れる彼女よりも余程不親切に、何の署名も入れない手紙。 その差出人を、彼女は知っていたかどうか。* ] (197) 2022/01/20(Thu) 20:30:33 |