【人】 兎系 ニア>>197 うるさい、胡散臭い。 初めて話したときから、彼を評するのに用いられた言葉。 「最初に会ったときは、随分と軽薄な人だと思ったわ。 次に、わたしの嫌いな『優しい人』だって」 たくさんの人と平等に話をして、不機嫌な―― あからさまに面倒そうな女の子にまで気を配る姿は、 少女からはそうとしか見えなかった。 「不機嫌にならないでくださいよ、お嬢さん。 僕のこの笑顔に免じて〜〜〜ねっ!」 あれも嫌これも嫌、嫌いなものばかりの少女は―― その中でもいちばん、優しい人が嫌いだった。 自分なんかに優しい人は、誰にだって優しいから。 愛想笑いも、謙遜も。お世辞も。 気遣いだって。平等に振り撒かれるそれらが、大嫌い。 誰の特別にもなれなかった少女は、 等しく与えられる優しさがいちばん、嫌いだった。 「だから、利用してやろうって思ったのよ。 壊れた……壊した弓を見せて。直してもらうついでに、 同情のひとつでも引いてやろうって」 ロール 少女はかつての役割に、思いを馳せる。 (→) (199) 2021/05/01(Sat) 15:35:21 |