【人】 空虚 タチバナ[大学生になる頃には私の居場所はなくなっていた。 それでも大学に通わせてくれたのは、体面を考えてのことだろう。 バイトをして家を出るという提案は通らなかった。 あと4年。私は指折り数えて日々を過ごした。 家を出れば、あと少し我慢すれば、私は大人になれる。 何になりたいとか、何になれるとか、何も頭になかった。 だって私は出来損ないで、何もかもが最低だけど、 それでも大人になれば、少なくとも家族から離れられるって。 毎日浴びせられて染み込んだ叱責≠ェ私の常識になっていた。 仕方ないと言い聞かせるのも限界だった。] (203) 2022/08/11(Thu) 1:55:43 |