【人】 兎系 ニア>>204 >>a59 >>a60 >>a61 ――それから、唇を離し、金の瞳を真っ直ぐ見つめて。 目を細める。逸らしはしない。 青年は守ってやりたいと言ってくれたけれど。 大人しく守られてばかりの、 か弱いお姫様になるつもりはない。 だって、この寂しがりの青年一人分の―― いいえ、“技術指揮シトゥラ”と、 その中にいるかもしれない、あんたのこと。 二人分の重さを支えなければならないから。 だから少女はその足で立って、青年に真っ直ぐ微笑みかける。 逃げはしない。――逃がしも、しない。 その瞳から餓えの色はすっかり薄らいで、 しかしそれでもやっぱり、すこしばかりは残っている。 ……このどうしようもない寂しがりにとっての 『すこしばかり』が、 万人にとってもそうであるとは限らないけれど。 ロール 役割に浸されきったあの頃より、 正気の色であることは確かだ。 瞳の中、微かにたたえられる餓えが、 青年の手を食んだ行為が、包む両手の温もりが。 拙い言葉の隙間を、埋めてくれればいい。 (→) (205) 2021/05/01(Sat) 15:55:21 |