【人】 1年生 朝霞 純>>209 [勇気が必要だったよね、なんて彼女にこそ言える言葉だと思うのに。 お芝居なんて酷い言葉を使われて、許せないなんて思ってもなかった、なんて。 やっぱり、黒崎さんは優しかった。 直後に見せた笑みは王子様とあだ名されていた時よりも、数段美しいものに見えて。それで私は、ようやく彼女の素の姿を見れた気がして。 謝罪に来たのに、責められなかった。 それどころか、ほんの少し彼女の本質に触れることができた。 安心しきった私は、黒崎さんの問いに“なんですか?”なんて聞き返して。 そして、問いかけられた言葉。>>210 その質問に、一瞬世界も、目の前の黒崎さんも、私の心臓すらも、凍りついた感覚がした。 それは別に、問いかけ自体に動揺したわけではなくて。 逃げ続けてきた問題が、私が努力するより先に、胸に飛び込んできたからだった。 私は黒崎さんを見つめ返した。真剣な眼差し。 彼女は一体、気づいているのかいないのか。 数分間、私は考えて、そして言葉を返した。] (215) 2022/09/09(Fri) 10:58:16 |