【人】 花屋の主 メルーシュ【コンペ2日目、宮廷前広場での回想】 [>>2:167 花束のいっぱいにつまった花籠を抱えていると、花たちの声が重なりハーモニーとなって聞こえる。 その心地よいハーモニーにあわせ、風がそよと吹けばそれにかき消されるほどの微かな声で歌いながら歩いていたメルーシュは、ひかえめにかけられたその声に気が付くと立ち止まった。 振り向いたそこに立っていたのは、ひとりの少女。 メルーシュはにっこりとその少女に微笑みを向ける。 直接交わしたことばは多くはなく、何かの折に聞いた彼女の名前は覚えている。 「こんばんは、エヴィさん」 目の前の彼女は礼儀正しく微笑み挨拶を返してくれるが、なぜだろう、その表情がいつもとは違う翳りを帯びているように思えた。 メルーシュは、彼女が時折花屋に来てくれるときのことを思い出した。 (219) 2020/09/29(Tue) 20:42:17 |