【人】 絵描き 要ぬう。なんと言う不平等。 まあ先輩がはしゃいで落ちる姿なんて想像も出来ないけど。 落ちたら、泣きながら引っ張りあげるであろう自分が容易に想像できる。それが少し悔しい。 「じゃあ僕はせいぜい落ちないように頑張りますよーだ」 と不貞腐れたような顔を作る。 別にほんとに不貞腐れてるわけじゃないけど。 ん。 大丈夫そうか?と尋ねる声。 この人はやっぱり優しい。普段は、こう、そんな素振りも見せないのに。 こういう、ふとした時に見える優しさに、惚れる女の子も少なくないよなあ、なんて考える。彼女がいないなんて信じられない。 こくり、と頷いてから、それじゃあ見にくいかもしれないなと、言葉を付け足す。 「凄い、いい場所貰っちゃったみたいですね。人の顔は見えないけど雰囲気は感じられる。ちょっとだけ、あの中に混ざりたいって気持ちは無くはないですけど、うん。大丈夫ですよ」 「あの中に混ざりたいって気持ちだけが強くならないのは、きっと、雨宮先輩が一緒についてきてくれたから。だから、ありがとうございます」 「あ、先輩も下に行きたくなったら、いつでも行っていいんですからね?」 と自分ばかりはしゃいでいたことに気づいて、 多少申し訳ない気持ちになり、言い出してみる。 どう受け取るかは知らないけど、これもれっきとした僕の本心だ* (220) 2020/06/19(Fri) 17:00:12 |