【人】 閻魔参[後日談:不公平な賽] 運定めの祝宴を終え、解放された後のこと。 閻魔参は街の一角で、よく見知った少年少女に遭遇した。 赤白の帽子に赤い服の、幼さすらある少年は、黒い布で口許を覆った少女に、飛び付かんばかりの勢いで駆け寄ったところだった。 祝宴のさなかから、話したいことは溜まりに溜まっていたのだろう。再会を喜び合い、互いを気遣い合って、まるでそれは比翼の鳥のようだった。 ひとしきり親しげな会話を交わした後、少年は「あ、そうだ」と懐をごそごそ探り、少女に一枚のカードを差し出した。 そのカードに見覚えがあり、閻魔参は足を止める。 引き当てるなり目を逸らした記憶しかないとはいえ、それはかつて自分が手にしていたものだ。あの少年に、交換してほしいと乞われたもの。 その時は、手元に置きたくなさも手伝って、特に深くは考えなかったものだが── 身に覚えのないであろう、あられもない姿のそれを、映っている当人に渡すというのは、一体どういった心の動きなのか、と、思わず立ち止まり、様子を伺う。 (220) 2022/08/02(Tue) 3:50:54 |