【人】 空虚 タチバナ[生まれてくることのできなかった子どもたちの前では、 いつも以上に無口になる。 口を開いてしまえば、 「代わってあげたかった」なんて、 ふざけた言葉が溢れてしまいそうだからだ。 過ぎてしまったもしも程、愚かなものはない。 もし、生まれたのが私じゃなかったら。 あの子たちの誰かだったなら。 ……だったらなんだと言うのだろう。 生から解放されたというのに、 あの子たちを見るといつだって生を思い出してしまう。 だから、あの子たちが望むことを私は阻まない。 それは罪悪感などという愚かな感情ではなく、 ただ関わりを避けるためのエゴに過ぎない。] (221) 2022/08/11(Thu) 3:03:02 |