【人】 ??? 工藤美郷[小泉先輩に名前を尋ねられて、顔に押し当てていたハンカチを離した。 目線を合わせる小泉先輩を、恨めし気に見つめる。すっかり元通りの目で。] あなたは写真に名前をつけるの? [しばらく沈黙をしていたが、] ……そうやって気持ちを汲もうとするから、あの子はとても生きづらい。 [誰もが気持ちを汲む能力を持っていれば、関係性は潤滑だろう。 だが、その能力が欠けた工藤は、人々の思いやり故に、ありもしない悪意を汲まれてしまう。 多様性の重視される今の時代では、合わない相手は放置が美徳。結果、角の立つ工藤の言動は正されることもなく、ただ人は離れていく。 この世界の優しさ故に。 彼女は諦めたように嘆息すると、] ついてきて。 [小泉先輩に背中を向けると、今度はゆっくりと歩き始めた。] (223) 2022/09/07(Wed) 7:12:41 |