【人】 寿ホ儀 直青[浮草生命研究所、及び楽園の合同施設。 荒れ果てた世界に於いて、驚くべき植生の豊かさを誇る、正に「楽園」である。ここまでの規模に育てるのに、どれだけの労力と──情熱が費やされたものか、想像するだに目眩も催そうというもの。 その努力は果てしなく、そして、美しい。 生い茂る葉の、幹の、蔦の、ひとつひとつに視線を留まらせながら、ただゆっくり、ゆっくりと、直青は歩いた。 細分化されたフレームに茎の伸びるコンマ数秒を映し取り、 小鳥の、威嚇音でない、囀りを聴いた。 悠久を想う時、直青の心にはいつだって植物たちが居た。 その顕現を、眼前に溢れさせている。] (229) 2023/11/25(Sat) 14:00:11 |