【人】 美術 エノ>>232 ツルギ 「退屈から逃れるためにするものではないと思う。」 バッサリ。 自分はどっちもやったことないけれど。 たいてい目的があるとか、好きだからやるものだと聞く。 「結果がすぐ出るような趣味があればいいのかもしれないね。」 「それか、目標を短く設定するとか。」 「例えば、そう。人と話す事。人の話を聞くこと。自分の話をすること。心を近づけてみる事。」 「そうして少しずつ段階を踏めば、いずれ理解者ができるかもしれない。」 細かな目標は大事だよ、なんて。 人生の先輩らしい事を言ってみる。 背中から見ている君は分からないだろうが、青年は自分を描く時、瞳を閉じている。 視界がどこか別の場所にあるように。 それもVRの機能の一種なのかもしれない。もしかしたら、空中に目玉があるのかも。 風景が多数を占めるこの絵は、しかし青年にとっては。 肖像画であった。 「うーん…期待……そうだね。」 「どちらかと言うと、諦められないだけかな。」 「一人でも、心から理解してくれる人がいてほしい。」 「そんな夢を諦められなくて、求めているだけ。」 「俺は君みたいに、何かに裏切られたような経験もないからね。」 風が吹いて、首筋に冷たさを感じた。 肌についた水滴を、指で拭った。 (234) 2022/02/23(Wed) 17:45:47 |