【人】 灯守り 小満[案の定蚕は 『元の(小雪さまの)ところに返してきなさい!』 なんてそれこそ捨て犬相手みたいな調子で怒っていたけれど、何とか紅に宥められて、げっそりした様子で自室に篭ってしまったっけ。とはいえ今は認めてくれているようだし、問題ない問題ない。 かくいう紅もこれには呆れ返っていた。が、こうなった主人がもうどうしようもないことをよくよく知っているのも彼だ。 まだまだ困惑のさなかにいそうな麦に温かいお茶を出して、ひと通り小満宮と仕事の話をしてくれたのは紅だった。 私はといえば小雪に文を出していた。 といっても、それだけで内容がわかるようなものでもない。 『次の会合で紹介したい子がいる』とだけ伝える、簡素なもの。 察されたかもしれないし、また戯れかと思われたかもしれない。 とにかく次の会合には麦を連れて行って、『もう返してあげないもんね』なんて自慢げに見せびらかしたりしたもんだ。] (236) 2022/01/17(Mon) 11:13:54 |