【人】 XIV『節制』 シトラ[ 胸の中、つめたい風が吹き付けるような淋しさを感じた。 世界の崩壊は止められたはずなのに みんなまだすぐ近くに居るはずなのに 世界中でただひとり取り残されてしまったような そんな錯覚に陥った。 頼りなげな足取りで去ってゆくアリアちゃんを わたしは、見送ることしかできない。 見送らなければいけない。 ただ待つことしか、わたしにはできない。そう直感した。 誰より近く、長く傍に居たはずなのに、 誰より彼女を救いたいと願ってきたはずなのに、 誰より大切に想ってきたつもりでいたのに、 わたしはおそらく恵まれて生きてきた方で 知識と経験とは比べ物にならないほど別の物で わたしは、話を聴くことはできても きっと 真の意味では彼女の抱えた想いを理解しきれない。 わたしはいま、彼女の傍にいるべきじゃない。 彼女には、彼女を想ってくれるひとが ──わたしの、ほかにも。 そう思い至ってしまったら、 ]** (244) 2022/12/21(Wed) 22:43:58 |