【人】 1年 高藤 杏音── 時計屋 ── [海の中に居るような、命の音のように聞こえる時計の音。 先輩が、心臓の鼓動のようだと思っていることを、私は知らない。 鐘の音が響いて。先輩の手が触れて。 店内を共に見て回る。 私は一つの棚の前で足を止めて。 金色の綺麗な懐中時計。 綺麗だな。と、思わず視線が引き寄せられる。 先程帽子屋で見た、ホームズの帽子と合わせれば、本当にタイムスリップしたみたいだ。 なんて。値札は見なくても、買えないのは分かってる。 ただ、思わずじっと見詰めてしまっただけ。 隣に並ぶ、鈍い銀色の懐中時計は、空先輩に似合いそうだな。 なんて、銀色の懐中時計を見てから、空先輩を見て。 うん。似合う。と、一人でニッコリ笑った。*] (256) 2020/11/14(Sat) 23:30:39 |