【人】 船医 チャンドラセリーニの一族は数だけは多いが、直系で残っているのは父だけでね。 父と母が出会って結ばれた頃は、ちょうど医療が発達して、生命が造り出せるようになって……命が随分安くなってしまった頃だったそうだよ。 それでも父は人間の回復力を高めて自然治癒をすべきだという思想の持ち主で、それが安価な生体パーツを積極的に使うべきだという親戚連中の癇に障ったらしい。 母の市民階級だったか母の出自だかを理由に、セリーニ家には相応しくないと追い立てたそうだ。 ……簡単に言ってしまえば、そこで生まれたのが私。 産後の肥立ちが悪く母は亡くなり、父と同じ思想だった曾祖父が私たちを見付けた時には、父も病を得ていた。 そのまま曾祖父に引き取られた私は、曾祖父と共に暮らし、曾祖父に言われるまま医師の道に進んだ訳だ。 (262) 2022/07/14(Thu) 1:40:04 |