【人】 書生 茅[助けたい、と。 こくりひとつ頷いた青年に、『山神さま』は、薄い笑みを見せる。>>258 嫁の身代わり、という単語にも、一拍の間をおいて、こくりと頷く。 嗚呼、そうか……―――― 嫁の代わりに、喰われれば良いのだな、 と、思い至る。 青年は、“そう”言ったことにはとんと疎くて、 疎すぎて、 『山神さま』の言葉の意味が、半分もわからなかった。 否むしろ、ほとんどわからなかった。 ただ、『嫁のかわりに』という以上、嫁の代わりなのだろうと。 つまりは生贄として命を捧げよと、そういうことなのだろうと。 阿呆の自覚のない青年は、わからないくせに分かったつもりになる。 つまり、 『死ね』 (272) 2021/06/17(Thu) 23:13:08 |