[空閑が俺と付き合ったことで一生童貞だろうことは諦めてもらうとして。

デートの経験もないってのはさすがに悪いなって気持ちはあった。

まだ引っ越したばかりの頃、デートの真似事をしたのはそういう理由だけでもないんだけど。>>269

デートって何すんのとか聞いてくるからしてみるかとその時やってた映画を見に行って。

元々ただの買い出しのつもりだったから、そう動き回れない代わりに買い物や飲み食いしたものの、友達と遊ぶのとそう変わらなかった気もする。

同じ家に住んでるんだ、ホテルに行く必要なんてなかった。

でも、酔っ払ってた空閑がラブホの看板の前でコンセプトがある部屋の写真を指差して大声で笑うわ、サービスのドリンクバーやらアイス食い放題に興味を示すわで。

ラブホの前で騒いでんのも恥ずかしいのと、なんとなく気になって「アイス食い放題出来るとこ行く？」って聞いたら、へらへら笑って頷いてたからチョロすぎてびびった。

この調子だと誰に誘われてもついてくんじゃねえのって。

空閑が酒を飲むのに微妙な顔をするのは、そういう経緯があるからだ。

ラブホに入ってからそこがどういう場所かや俺と入る意味も理解していたことはちゃんと確認したからいいんだけど。
結局アイスは食わなかった。]