【人】 1年生 朝霞 純【回想・死者への便り】 [退院してまだそんなに経たない頃、松葉杖をつきながら、何とか大学生活に復帰した頃。 工藤さんの家に招かれて、たまにお邪魔して、そっと課題を進めるのを見守ったり、工藤さんの作ったクリームパンを持って小泉さんのお墓参りに一緒に行ったくらいの頃。 私はお墓にクリームパンを供える工藤さんを見ながら、小泉さんのお葬式に行けなかったことを考えていた。 そう、私はまだ、小泉さんにちゃんと挨拶をしていない。 自分なりに最期は看取ったし、見守っていて、とは病室で手紙を受け取ったときに言ったけれど。 ちゃんとした挨拶も、お礼も、まだ出来ていない。 お別れの言葉は、何だかちょっと寂しいし、見守っていてほしいなら違うかな、なんて思っていたわけだけど。 小泉さんはやっぱり旅立ってしまったから。 せめて手紙くらい送りたい。 お礼と挨拶と、ちゃんとしたお別れの言葉を。 様々なものを遺してくれた感謝を、旅の無事を祈る言葉を書こうと思う。 工藤さんと一緒に、そして出来るなら…] (279) 2022/09/19(Mon) 8:52:33 |