
![]() | 【人】 痛覚喪失 アルマ[ 普通のこと、と返す声は存外小さいものだった。 ────果たして、女にその普遍は遠い概念である。 女がいた貧民層の集まる場所は人への関心に乏しく、 「死ぬか」「死なないか」が名前代わりだ。 夫婦の元にいた時は、そもそも他の者と接する機会もなく 故にぱちり、と数度、瞬いて。 ] そうかな。 ……ううん、そうかもね。 [ 名前を覚えるということは。 相手を、一個人として認識するということだ。 ここでは生死を意識する心配がない。 不意の実感を得て、女は曖昧に頷いた。 ] (291) 2024/08/26(Mon) 19:04:21 |