【人】 花屋の主 メルーシュ[コンペの賑わいの中、小ぶりな花束を入れた籠を抱えて、メルーシュはまるで散歩でもするように宮廷の近くにある通りを歩いていた。 時折、花を求める客の声も聞き逃すことがあるのは、それぞれに趣向を凝らした花束の花たちが、聞こえてくる音楽に合わせて、それはそれは幸せそうに歌を歌っているから。 しんと静まり返った聴衆の気配の中、その声が、旋律が、風に溶けていくように響いた少女の歌声。 そしてそのあとの、ひときわ大きなざわめき。 庭園の外にいても聞こえた。 それは紛れもなく、自分の内なる声と響きあう音楽だった。 メルーシュはただただしあわせだった。] (うん、わたしはやっぱりこの国が好き) (291) 2020/09/23(Wed) 22:09:30 |