![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[俺は意地っ張りで負けず嫌いで、 本気の弱音ほど吐けないところがあるから。 惺の前でも、そういうことは口にしなかった。 ユニット活動の代わりに、七川先生の舞台のこととか、 今度ドラマで役がもらえそうだとか、 自然とそういう話が多くなった。 演技は、ユーリ以外の何者かでいられる時間だったから。 活動する分野が自分と違って──そう思っていた、 その時は──且つ仕事が順調そうな惺は、俺にとって 安心してそういう話ができる数少ない相手だった。 惺がその頃、どれだけ俺の状況を知っていたかは 分からない。 抱えているものを吐き出さずとも、 惺の傍に居るのは楽だった。 惺の隣にいる俺は、我儘で、奔放で。 軽口も悪態も吐く、素のままの自分でいられたから。] (294) eyes 2025/08/09(Sat) 8:22:45 |