【人】 寿ホ儀 直青- 桜花 - [下ろしていた瞼を持ち上げると同時、"感知"を開放する。 途端、世界は拡張を見せる。 それは折り畳まれた六角が潤びて解けてゆく様を幻視させるようで、直青はこの感覚を気に入っていた。 楽園である。敷地のほぼ中央、植物園の一角を訪れていた。 灰の空と黄砂と朽ちたコンクリート、見慣れた燻む色彩の中に、今は緑が在った。贅沢な景色かもしれない。けれど直青は、我々は、これを「当たり前」に還さなければならない。 誰の為に? 自らの愛した、すべての為に。] (294) 2023/11/26(Sun) 1:40:10 |