【人】 寿ホ儀 直青──桜花。 [その所在は探すまでもなく"識って"いた。微かに、しかし充分に注ぐ光を受ける、その背に声を掛けた。 近頃の彼は、これまで以上に好奇心を遊ばせているようだ。迸るままに飛び回る視線は、その通りに本人を導き続けている。"ひと"への興味も、増しただろうか。] 楽しんでいますか。 今という時間を。 ──今日はひとつ、おねだりをしに来ました。 [背が並んだのは何時のことだったか。変わらぬ高さにある瞳を、その輝きに目を細めて覗き込む。] 桜花のお気に入りの場所へ、 僕を案内してくれませんか。 君の目に映るものを、 並んで見てみたいのです。 [記録としてではなく、同じ時間と空間で共有するそれは、今後はきっと貴重なものになっていくだろう。成長した我が子へ、過干渉は望むところではないのだ。子離れ、という古い言葉を思う。] お願い出来ますか。僕のbébé。 [bébé──あと何度、そうと呼べるだろう。] * (296) 2023/11/26(Sun) 1:41:31 |