【人】 綴 千翠― 回想:風鈴とオスカーくん ― [いつだったか、君はこの日のことを話してくれたね。 憂いた顔で海を眺めている私を見て、 残念に思ったんだって。>>269 たくさん勉強したのかな。 まるで小説の文章のような独特な話し方をする 君との会話で、私はこれまで、一度だって 困ったことはない。 けれど、その時だけは、君のその、 心の内を隠すことのない素直な言葉に眉根を下げた。] ───…そう だったんだ… [僅かに睫毛を震わせて小さく呟いて。 それまで他愛もないことを話していたなら、 急に表情が翳ったことは見て取れただろう。 それ以上は何も言えなかった。 取り繕うことも誤魔化すこともなく。 ただ一言、これも紛れもない私の本当だから。] (300) 2022/07/29(Fri) 18:49:19 |